川口貴志さんのお話

0789e1a328d76a33d6bb56f76ca29e7b桐生にお住まいの方なら、マンションや店舗に掲げられた「ANCHOR」の赤い看板を目にしたことがあるという方、きっと多いと思います。私も桐生市内にあ る、個性的なデザインのマンションを目にするたびに、「ANCHOR」のロゴマークが気になっていました。今回の古民家再生事業「アンカーPLUS」は、 桐生市の不動産会社「ANCHOR」の社長、川口貴志さんのアイデアからスタートしました。川口さんの、故郷桐生に対する思いと、「アンカーPLUS」に かける情熱をお聞きします。

 

「地域社会に暮らす皆様が輝く舞台創りをお手伝いしたい」

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私 は桐生に生まれ育ち、高校卒業後、都内の大学に進学するためこの街を離れました。卒業後は東京で就職。流通大手の店舗開発部門に勤務し、都内で新店舗出店 業務を担当していました。候補物件を発掘し、商圏や人口動態、交通量、競合店の状況の調査はもとより、オーナーとなる人物の適性、家族構成など様々な角度 から分析を重ね、出店にあたりました。平成4年に故郷に戻った私は、これらの経験を地元で活かしたいと考え、(株)アンカーを創業しました。32歳の時で した。

日本で不動産業というと、1980年代後半の「バブル景気」における不動産価格の高騰とその後の暴落、という一連の出来事の印象が強 いためか、投機的な仕事というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。私たちの会社はこれとは異なり、不動産の価値を見出し、これを有効活用 する環境を整える、収益不動産の企画立案と管理運用に特化しています。

「うちには先祖代々の大きな土地もないし、自分とは縁がない」とお思 いの方も多いでしょう。でも、生きていくうえで、住まいを借りたり、実家の土地を相続することになったりすることは、誰にでも起こり得ることです。一生不 動産に無関係というひとは、実は一人もいないのです。

 

「地方都市」 「シャッター通り」からの地域再生

通りを歩くと人がいない。空き店舗の窓には、“テナント募集”の看板がいつから掲げられているのか、すっかりほこりをかぶっている。こんな市街地の状況は、地方都市の日常景となっています。

空き物件情報を集めて、発信するだけでは借り手が見つからない。家賃を安くする低減化策をとっても、現状を打開するには至っていません。今まで採られてきたこれらの手法は、借り手側の本質的なニーズに応えていなかったのではないかと思います。

新たにその場所で暮らしや事業を起こそうとする人が求めているのは、未来の成功を具体的に思い描けるような、“道標”となるストーリーです。

地に足を着いた「地域再生」をするためには、その地域の独自性を洗い出し、潜在力を最大限に導き出す地域毎の「地域流儀」が必須だと感じ始めました。

 

地元力の結集 そして、人が輝く舞台創りへ

地域に対する愛着を持ち、まちのファンになってもらうためには、まず、「職」があること。すなわち、自分が必要とされ、認められ、能力を発揮する場所があることが第一条件だと思います。

人 として生を受けた限り、己を発揮して世の中に尽くすべき、というのが私の信条です。誰もが自分を表現したい、自分の存在によって誰かに喜ばれたいと考えて います。そして、社会において自分を表現する場面が「仕事」であると私は思います。まず「職」が最初にあって、そこに安らぎの場である「住まい」があり、 さらに日々のアクセントとなって暮らしをより豊かに彩る「縁」、すなわち温もりのあるコミュニティーがある。この3つが揃ったとき、そのまちは、人が輝い て生きる舞台となり得ると確信しています。

私は古民家再生のプロジェクトを、「挑戦しようとする人にとってのベースキャンプ」を創る仕事で あると同時に、人がその人らしさを十二分に発揮して輝く舞台創りの機会と捉えています。古民家には、かつてそこで人々が生き生きと生活を営んだ歴史があ り、往時の潜在力が眠っています。それを導き出し、今日的にリノベーションすることにより、古民家は命を吹き返すのです。そして、新しい命を得た古民家に は、再び人々の泣き笑い、暮らしの声が響き渡る空間が萌芽してゆくことでしょう。

私は「アンカーPLUS」がそんな場所になるように、このプロジェクトに関わる全ての仲間たちと、オープンをきっかけにこれから出会うであろう、たくさんの方々の想いを結実させていきたいと心から思っております。

アンカー川口さん

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い つも相手の目を見て、真剣に、情熱的に、ときにはユーモアを交えながら、話してくださる川口さん。お話をしていて感じるのは、川口さんが何よりも、人が好 きで地域を愛していること、そして、自身の持てる力を存分に発揮して、地域にあるものを輝かせることこそが自分のmissionであるという熱い思いで す。川口さんのプラスのチカラが、「アンカーPLUS」の土台にあります。ここからいいコトが始まる予感がする、そんなインタビューでした。